何が起きたのか
2026年8月20日、エイベックスの松浦勝人会長が自身のXでこう書きました。
https://x.com/maxmatsuuratwit/status/2090215320921460852
要点を抜き出します。
| 本人の説明 | 内容 |
|---|---|
| 開設 | AIが指令を受けてnoteのアカウントを自分で作り、最初の記事を自動投稿した |
| 本人の作業 | 「僕がやったのは、パスワードを入力したことくらい」 |
| 制作の比率 | 「ほぼほぼAIがやってます」 |
| 素材 | 「僕の60年分のデータを入れたので、出てくるのは全部、本当にあった話です」 |
| 反応 | 1週間で4本。フォロワー2万人。スキ5万超 |
| 本人がやっていること | 「コメントは全部、僕が読んでいます」 |
この投稿だけで739万回以上再生されています。
連載4本の中身
まず実物を読むのが早いです。8月13日から19日にかけて4本出ています。
| 回 | タイトル | 内容 | スキ |
|---|---|---|---|
| 第1回 | [100万円でも100億円でも、なくなる時は一瞬だ](https://note.com/maxmatsuura/n/n1cf97b51d784) | お金の話。金銭感覚は使った金額でしか育たない | 1.6万 |
| 第2回 | [僕には友達がいない](https://note.com/maxmatsuura/n/n579f67f0a466) | 人間関係の話。寄ってくる人間の見分け方4つ | 1.5万 |
| 第3回 | [チャンスは、変な顔をしてやってくる](https://note.com/maxmatsuura/n/n04f20fbdce8e) | 貸しレコード屋から始まった原点の話 | 1.6万 |
| 第4回 | [僕は「有頂天」に100億円払った](https://note.com/maxmatsuura/n/nb8798f1dadbf) | 成功したあとに目的を失った2年間の話 | 7,691 |
読むと分かりますが、内容は具体的です。3,000万円という額。カウンターを2個買ってもらった話。通帳を見るのをやめた日。銀行員になるはずだった過去。
これは他人が書けるものではありません。日本の音楽業界を作ってきた人が、成功したあとに何を失ったかまで書いています。こういうものを読める機会はほとんどありません。
中身は本物です
先に立場をはっきりさせます。
素材は本人のものです。60年分の経験が入っています。浮き沈みを経験した人だから書ける話であって、情緒でごまかす必要がないところまで具体的です。
第4回の締めはこうです。有頂天の請求書は忘れた頃に届く。だから調子がいい人ほど今日、自分の数字を自分の目で見てほしい。通帳でも売上でも体重でもいい。
中身に問題はありません。論点はそこではありません。
それでも引っかかるものがあります
読んでいて、どこかで手が止まる人がいます。
内容がつまらないからではありません。むしろ逆です。読ませる話が続いているのに、文章のほうに意識が向く瞬間があります。
問いを立てます。人間はこういう書き方をするだろうか。
第3回の最初の小見出しはこうです。
雨の夜、僕だけ置いていかれた
上手い書き出しです。ただし個人の日記でこの形が出てくることは多くありません。
小見出しを全部数えました
感覚の話で終わらせないために、4本の小見出しを全部数えました。
| 記事 | 小見出し | 読点あり |
|---|---|---|
| 第1回 お金 | 8本 | 4本 |
| 第2回 人間関係 | 10本 | 7本 |
| 第3回 チャンス | 10本 | 10本 |
| 第4回 有頂天 | 8本 | 6本 |
| 合計 | 36本 | 27本 |
36本中27本、75%の小見出しに読点が入っています。 第3回にいたっては10本中10本です。
形も揃っています。「お金は、人間関係を勝手に書き換える」「情報は、みんなが読まないものの中にある」「僕は、銀行員になるはずだった」。主語を置いて読点で切り、述部を続ける形です。
決定的だったのは冒頭と末尾です
読点より分かりやすい証拠がありました。
4本の書き出しの1行目です。
| 回 | 冒頭の1行 |
|---|---|
| 第1回 | お金についての、僕の経験と結論 |
| 第2回 | 人間関係についての、僕の経験と結論 |
| 第3回 | 仕事とチャンスについての、僕の経験と結論 |
| 第4回 | 成功と有頂天についての、僕の経験と結論 |
そして最後の小見出しです。
| 回 | 最後の小見出し |
|---|---|
| 第1回 | お金についての、僕の結論 |
| 第2回 | 人間関係についての、僕の結論 |
| 第3回 | チャンスについての、僕の結論 |
| 第4回 | 有頂天についての、僕の結論 |
4本とも完全に同じ型です。 題材の名前だけが入れ替わっています。
人が4本続けて書いた場合、ここまで揃うことはまずありません。書きたいことが毎回違うからです。逆に型を決めて中身を差し替える作り方なら、こうなるのが自然です。
効果的なAIの使い方
ここからが本題です。この件は失敗例ではありません。使い方の見本になっています。
効いた部分と、まだ伸ばせる部分を分けます。
| 工程 | 誰がやったか | 評価 |
|---|---|---|
| 素材の用意 | 本人(60年分) | ここが成果の中心 |
| 何を語るかの選択 | 本人 | 4つの題材はどれも読まれている |
| 構成と文章化 | AI | 速い。ただし型が出る |
| 公開の判断 | 本人 | 実行したから届いた |
| コメントを読む | 本人 | 関係が続く部分 |
まねすべきなのは渡した素材の量です。
同じ手順を誰かがなぞっても、入れるものがなければ同じ出力は出ません。AIが強いのではなく、入力された60年分が強い。この投稿への返信でそう指摘した人がいて、そのとおりだと思います。
一方で、通っていない工程がひとつあります。出力を読んで削る工程です。 そこだけ足せば、AIっぽさは消えます。
直し方は削ることです
足すのではなく削ります。
| 症状 | 対処 |
|---|---|
| 小見出しに読点が多い | 読点なしで読める形に組み直す |
| 全部の小見出しが同じ形 | 半分を体言止めや問いに変える |
| 冒頭と末尾がテンプレ | 記事ごとに入り方を変える |
| 副詞が多い | 「静かに」「まさに」を消す。意味は変わらない |
| 全体が整いすぎている | 言い切る文と長い文を混ぜる |
一番効くのは声に出して読むことです。息が続かない箇所と、読みながら意味が入ってこない箇所。そこがたいてい直すべき場所です。
作業としては1本あたり数分です。素材集めに60年かけた人が、最後の数分を惜しむ理由はありません。
公表したこと自体は正しい行動です
誤解のないよう書いておきます。AIを使ったと明かしたのは、望ましい対応です。
Googleも同じ立場です。
「これはどのように作成されたんだろう」と思わせるようなコンテンツでは、AI や自動化の使用を開示するのは有益なことです。
そしてGoogleは、AIを使ったこと自体はガイドライン違反にならないと明記しています。問題になるのは検索順位の操作を主な目的にした場合です。
よくある質問
松浦会長のnoteは何がAIだったのですか
本人の説明では、noteのアカウントの開設と最初の記事の自動投稿をAIが行い、制作も「ほぼほぼAI」としています。素材は本人の60年分のデータで、コメントは本人が読んでいるとしています。
内容は本当の話ですか
本人は「出てくるのは全部、本当にあった話です」と書いています。
どこでAIだと分かるのですか
文体に型が出ます。この4本では小見出し36本中27本に読点があり、4本とも冒頭と最後の小見出しが同じ形でした。
AIで書くのは悪いことですか
Googleは作成方法ではなく内容を評価すると明記しています。ランキング操作を主な目的とした自動生成はスパムポリシー違反ですが、AIの利用自体は違反になりません。
同じやり方をまねできますか
手順はまねできます。ただし出力の質は渡した素材で決まります。60年分の具体的な経験がない状態で同じ手順を踏んでも、同じものは出ません。
AIっぽさを消すプロンプトはありますか
指示で減らすことはできます。ただし出力を読んで削るほうが確実です。読点と同じ構文の繰り返しを減らすだけで大きく変わります。
AIを使ったと書くべきですか
Googleは、作り方が気になるコンテンツでは開示が有益としています。書くならどの工程でどこまで使ったかまで書くほうが伝わります。




