Claudeが書いた文章に印が入ります
Anthropicは2026年8月14日、今後のClaudeが生成する文章に透かしを入れると発表しました。EUのAI法に対応するためです。
ただし勘違いされやすい点があります。この透かしで分かるのは「Claudeが関わった可能性が高い」ということだけです。 「AIが書いた」の証明にはなりません。Anthropic自身がそう書いています。
日本も対象です。EU向けだけに絞る技術的な手段がまだないため、全世界に適用されます。
確認基準日:2026年8月19日。Anthropic公式「How Claude's text watermark works」(2026年8月14日)をもとにしています。
隠し文字が入るわけではありません
まず仕組みです。ここを誤解すると話が全部ずれます。
AIは文章を1語ずつ作ります。「今日の天気は寒くて」の次に来る言葉は「どんよりしている」かもしれないし「灰色だ」かもしれない。どちらでも意味はほぼ同じです。こういう「どっちでもいい場面」がひとつの文章の中に何百回も出てきます。
このどっちでもいい選択を、これまではただの乱数で決めていました。透かしは、そこに鍵を使った規則を持ち込みます。
Nothing is added to the text and there are no hidden characters.
文章に何かが足されるわけではない。隠し文字もない。そう明記されています。
だから読んでも分かりません。文字数も増えません。料金も速度も変わりません。個人や組織やチャットの内容が特定されることもありません。
方式はGoogle DeepMindがNature誌に発表したSynthID-Textをベースにしたものです。他の大手AI企業も同じEUの行動規範に署名していて、それぞれ自社の透かしを実装していきます。
「AIが書いた」の証明にはなりません
ここが一番大事なところです。
透かしが答えられるのは「この文章にClaudeが関わった可能性はどれくらいか」という質問だけです。公式はこう書いています。
It cannot distinguish "Claude wrote this" from "Claude heavily edited this."
Claudeが書いたのか、人が書いたものをClaudeが大幅に手直ししたのか。透かしはこの2つを区別できません。
さらに次のことも分かりません。
つまり「透かしが出た=AIに書かせた」と決めつけることはできない仕組みです。
透かしが付きにくい文章があります
全部の文章に均等に入るわけではありません。公式が挙げている例を整理します。
校正だけ頼んだ場合
ほとんど付きません。単語のほぼ全部が書いた本人のものなので、透かしが乗る余地がないからです。
文法と句読点だけ直してもらった場合、透かしは直した数語にしか入りません。検出には足りない可能性が高いと公式は書いています。
短い文章
検出できません。選択の回数が少ないほど手がかりが減ります。長くなるほど判定の確度が上がる仕組みです。
事実を書いた箇所
薄くなります。「ニュートンの主著はプリンキピア」と書くとき、次に来る語は1つしかありません。選択の余地がないところに透かしは乗りません。
コード
ほとんど付きません。正確でなければ動かないからです。ただしコード内のコメントには乗ることがあります。
翻訳
全部付きます。 翻訳はすべての語をClaudeが選ぶからです。ここは見落とされやすい点です。
書き換えれば消えます
編集して回避できるのかという質問にも、公式は答えています。
軽い手直しでは完全には消えません。ただし全部の語を書き換えれば消えます。そしてそこまで書き換えたなら、もうAIが生成した文章とは言えないのではないか、と公式は付け加えています。
画像やファイルは別の方式です
文章の透かしとファイルの扱いは別物です。
Claudeがpngやjpgやsvgを作った場合、ファイルのメタデータに署名付きの記録が付きます。C2PAという業界標準で、カメラメーカーや写真編集ソフトが使っているものと同じです。
こちらはファイルの中身自体は変わりません。埋め込みでも隠しでもなく、付随する記録です。
いつから適用されるのか
| 対象 | 状況 |
|---|---|
| 2026年8月2日以降に出たモデル | 発表時点から対応 |
| それ以前のモデル | 移行期間。今後数か月かけて順次対応 |
| 対象地域 | 全世界(日本を含む) |
| 検出方法 | 検出用のAPIを近く提供予定 |
EUがAI提供者に生成物の表示を求め始めたのが8月2日です。Anthropicを含む約190の署名者が、7月にEUの透明性に関する行動規範に署名しています。
クリエイターにとって何が変わるか
まず変わらないことです。公式は、透かしによって著作権や著作者や法的責任は変わらないと明記しています。利用規約上の権利も変わりません。
変わるのは「AIが関わったかどうかを外から確かめる手段ができる」という点です。
これは各プラットフォームの動きとつながっています。YouTubeはAIラベルを自動で付ける仕組みを持ち、Xは自動的な手段で作られた投稿を報酬の対象から外しました。AI利用の開示は、議論の段階からルールの段階に移りつつあります。
制作の現場で意味があるのは、AIを使ったか使わなかったかの二択で考えるのをやめることです。どの工程で、どの程度AIが関わったのか。それを自分で説明できる状態にしておくほうが現実的です。
よくある質問
AIで下書きした記事は透かしでバレますか
Claudeにゼロから書かせた長い文章なら検出される可能性が高いです。ただし検出されても分かるのは「Claudeが関わった可能性が高い」ということだけで、あなたがどこまで手を入れたかは分かりません。
自分で書いて校正だけ頼んだ場合はどうなりますか
ほとんど付きません。単語の大半が自分のものだからです。ただし長さと直した量によります。
文章の質は落ちますか
落ちません。Google DeepMindの検証では、透かしありとなしで評価に統計的な差は出ませんでした。人が並べて比べた実験でも差は出ていません。
料金は上がりますか
上がりません。追加のトークンが発生しないため、提供側の費用も利用者の料金も変わりません。
他社のAIも同じですか
方式も鍵も別々です。ChatGPTやGeminiで書いた文章にClaudeの鍵は反応しません。ただし同じEUの行動規範に署名した各社が、それぞれ自社の透かしを実装していきます。
AI検出ツールとは違うのですか
違います。Pangramのような検出ツールは鍵を持っていないので、文体の癖から推測しています。公式は例として、AIが「this isn't X, it's Y」という言い回しを好むことや「quietly」を多用することを挙げています。




