学習されたか聞ける制度ができました
自分の絵や文章がAIの学習に使われたのか。これまで確認する手段がありませんでした。
内閣府が「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード」を公表しました。ここに権利者がAI事業者へ開示を求められる原則が入っています。
ただし条件があります。誰でも聞けるわけではありません。
確認基準日:2026年8月26日。内閣府知的財産戦略推進事務局が公表したプリンシプル・コード本文をもとにしています。
海外のAI事業者も対象です
まず適用範囲です。ここが広く取られています。
日本国内に本店又は主たる事務所を有しない生成AI事業者であっても、生成AIシステムや生成AIサービスが日本に向けて提供されている場合(日本国民が利用できる場合を含むがこれに限られない。)には、この文書の適用を受けるものとする。
日本から使えるなら対象です。 海外の事業者だから関係ないとはなりません。
対象になるのは「生成AI開発者」と「生成AI提供者」です。公衆へ提供せず研究開発だけをしている人は含まれません。自社データだけで作った社内向けAIも外れます。
法的拘束力はありません
期待しすぎないよう、先に書いておきます。
生成AI事業者に帰属する機微な情報(営業秘密及び安全性・セキュリティに関するものをいう。)の強制的な開示を求めるものではなく、法的拘束力を有する規範ではない。
採用されているのはコンプライ・オア・エクスプレインという方式です。原則を実施するか、実施しないならその理由を説明する。罰則はありません。
ただし逃げ道は塞がれています。「体制がないのでできません」と言うだけでは不十分とされ、いつ体制が整うかまで説明することが求められます。 利用規約で開示を制限している場合も同じです。規約があると言うだけでは足りず、なぜその規定を置いたのかの説明が要ります。
開示を求められるのは誰か
ここが制作者にとって一番大事な部分です。ルートは2つあります。
| 誰が求められるか | 何を聞けるか | |
|---|---|---|
| 原則2 | 法的手続を現に行っている、または準備している権利者とその代理人 | 自分が示したURLが学習データに含まれるか |
| 原則3 | その生成AIで生成した本人 | 自分の生成物と同一・類似のコンテンツが載るURLが学習データに含まれるか |
原則2は訴訟やADRを起こす前提の人しか使えません。 条文にはこう書かれています。
訴訟提起、調停申立て、ADR(裁判外紛争解決手続)その他の法的手続を現に行い、若しくは準備をしている者
「なんとなく気になるから聞いてみる」は対象外です。開示を求めるときは3つを示す必要があります。該当者である理由。回答の利用目的と目的外に使わない誓約。照会するURLとその理由。
「私の絵は学習されましたか」とは聞けません
ここは誤解されやすいので、条文の注記をそのまま挙げます。
自ら作品を創作してウェブサイトに掲載している者が、当該作品と同一又は類似の生成AI生成物を発見した場合に、原則2対照情報の範囲を超えて、当該作品自体がクロール対象に含まれているか否かを照会することを想定しているものではない。
聞けるのは示したURLのドメインがクロール対象に入っているかという形です。作品そのものが学習されたかを直接照会する制度ではありません。
想定されている典型例はこうです。自分の作品と同一または類似の生成物を見つけたときに、自分の作品ページのURLを示す。そのドメインがクロール対象か、第三者から買ったデータの取得源に含まれるかを尋ねる。
robots.txt に従うことが原則に入りました
事業者側に求められる措置のうち、制作者が自分で動かせるものがあります。
ペイウォール等のアクセス制限や robots.txt 等の機械可読な指示に従うクローラの採用等に取り組むこと。権利者による適切な措置のため、ユーザーエージェントごとに上記の措置を公開し、変更時には通知すること。
robots.txtでの拒否に従うことが原則に書かれました。 さらに事業者は、どのユーザーエージェントにどう対応するかを公開し、変えたら通知することも求められています。
自分のサイトを持っているならrobots.txtを書くことに意味が生まれます。受け入れを表明した事業者が従わない場合は、理由の説明が必要になるためです。
同じ項目には、海賊版サイトへのクロール回避、学習ログの一定期間の保持、電子透かしやC2PAなど出所を証明する技術的措置も並んでいます。
受け入れた事業者は一覧で公表されます
守っているかどうかを外から見る仕組みも用意されています。
原則を受け入れる事業者は、自社サイトで受入れ表明と各原則の実施事項を公表します。実施しない原則があればその理由も出します。そのうえで内閣府の様式で届け出ます。内容は原則として毎年見直すことになっています。
内閣府知的財産戦略推進事務局は、届け出た事業者の一覧とリンクを公表します。
ただし限界も明記されています。事務局は届出の内容を審査しません。 第三者からの照会にも回答しません。一覧に載っていることは、内容が正しいことの保証になりません。
なお、この届出の開始時期はまだ公表されていません。 本文には「別途お知らせします」とだけ書かれています。
いま制作者にできること
制度が動き出す前提で、順番に挙げます。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 自分のサイトがあるなら robots.txt を確認する。原則に沿う事業者はこれに従う |
| 2 | 作品の掲載URLを整理しておく。開示を求めるときに示すのはURLになる |
| 3 | 生成物が自分の作品に似ていると気づいたら、生成日時とプロンプトを記録する |
| 4 | 使っているAIサービスの受入れ表明を読む。実施しない原則と理由が書かれている |
3は原則3を使う場合に必要になります。開示を求めるには生成物と、生成に使ったプロンプトを示す必要があるためです。
よくある質問
自分の作品が学習されたか聞けますか
条件があります。原則2を使えるのは、訴訟やADRなどの法的手続を現に行っているか準備している権利者とその代理人です。聞けるのは示したURLがクロール対象に含まれるかという形です。作品そのものが学習されたかを照会する制度ではありません。
法的な強制力はありますか
ありません。本文に法的拘束力を有する規範ではないと明記されています。コンプライ・オア・エクスプレイン方式で、実施しない場合は理由の説明を求める仕組みです。
海外のAI事業者も対象ですか
対象です。日本国内に本店がなくても、日本に向けて提供されている場合は適用を受けると明記されています。
robots.txt で拒否すれば学習されませんか
原則を受け入れた事業者はrobots.txt等の指示に従うクローラの採用に取り組むとされています。ただし法的拘束力はないため、確実に止まる保証にはなりません。
AIで生成した側も開示を求められますか
求められます。原則3が、生成AIで生成した本人からの開示の求めを定めています。この場合は生成物と、生成に使ったプロンプトを示す必要があります。
どの事業者が受け入れたか分かりますか
内閣府知的財産戦略推進事務局が、届け出た事業者の一覧とリンクを公表するとされています。ただし届出の開始時期はまだ公表されていません。
一覧に載っていれば安心ですか
そうとは限りません。事務局は届出の内容を審査せず、第三者からの照会にも回答しないと明記されています。




